ゆまにて日記

京都・左京区の鍼灸院 女性鍼灸師ゆにからの毎日のお知らせ

「本当の庭師になるには200年かかる」

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タイトル、間違ってないんです。

20年じゃないんです、200年なんです。

 

そろそろ遠い話題になりつつあるので書いておこうと思います、

「創業168年の造園会社の、8代目社長のお話を聴いたこと」

 

 

「ゆまにて ゆに鍼灸院」の建物はお借りしているもので、築90年の京町家です。

私の前は糸と布のお店が入っておられて、市内中心部に移転されるので空いたところへ入らせてもらいました。

この場所との出会いは本当に素晴らしいご縁で、このことは「ゆまにてができるまで」に書いた、ような気がします。

 

さて、その家は京都市から「京都を彩る建物と庭園」に認定されています。

京都を彩る建物や庭園 京都市文化市民局

 

1月29日にその建物や庭園のオーナーの交流会があり、私はオーナーではないのですが、大家さんのご厚意で参加させていただきました。

 

 

毎年1回行われる交流会なのですが、今年の講師は創業168年、南禅寺や無鄰菴などのお庭を手がけている「植彌 加藤造園」の8代目社長。

それがこの加藤造園さん、「ゆまにて」から徒歩1分くらいのところなのです。

ueyakato.jp

 

HPをちらっと覗いてもわかるとおりの立派な会社で、職人さんも60人ほどかかえていらっしゃるとのこと。いつも通りかかって、なんか立派な会社だぞ…ということで友人と注目していました。

 

 

今回お話をうかがって興味深く、感銘をうけたのは2つのこと。

 

本当の庭師になるには200年かかる

日本庭園は奥が深く、植物のことをわかるだけでなく、建物とのバランス、土木・電気などのインフラの知識、歴史、芸術などあらゆる要素が含まれます。

 

ですから、そのすべてを盛り込んで仕事をしようとすると、一人の力で身につけるには200年かかる、というのです。

 

だから、「歴史に学び、仲間に学ぶ」ことが大切である。

 

すでにある名庭や古い書物から学ぶこと。

そして同じ時代を生きる、庭を仕事にする仲間から学ぶこと。

それでやっと、自分の短い生涯を「200年」に相当するものにすることができる。

 

印象的だったのがこの話をされたとき、社長が、

「そうやって学ぶことで、200年生きられない悔しさを晴らしているんですよ!」

とおっしゃったこと。

 

 

作庭4分、育成管理6分

もう一つおっしゃったことは、庭は最初につくり上げるという作業が4分、残りの6分はそれを育てて管理していくことだということ。

 

どうしても、最初に作った「誕生の喜び」を大きく感じて、それで情熱が終わってしまうことが多いものだけれど、そこから「育っていくのを見守る」という喜びを感じてほしい、ということでした。

 

最初に庭をつくるときは、イメージをして、デザインをして、それが出来上がる、というわかりやすい喜びがある。

でもそこからは、ともすれば「維持する」という地道な、退屈なものとして捉えてしまいがち。

「維持管理」ではなくて「育成管理」。そこから「育てていく、育つのを見守る」ということを始めて、楽しんでほしいということでした。

 

 

この場所をそだてていこう

私は庭師ではないし、この家にもお庭はほぼないし、ひとりでお店をやっています。

でも社長の話をきいていて、全部、自分のことのように思えました。

 

私は鍼灸師/アスレティックトレーナーとして仕事をしていますが、この仕事も本当に終わりがなく、「200年」かかりそうな果てしない仕事なのです。

そのことの途方もなさに「はあ……遠い……」としんどくなることも、正直あったりします。

 

でも、それは楽しむべきことなんだな、とこの会に参加して思いました。

まず、社長がとても、楽しそうだったからです。

200年かかる深い遠い仕事だけれど、だから楽しい、という雰囲気をとても強く感じました。

参加者からのお庭の質問を受けておられたときも、一般の方と同じように庭に一喜一憂されていることが伝わってきました。

スライドを使ってお話をされましたが、出てくる社員さんたちの様子もとっても楽しそう。いい会社です。

 

 

そして、誕生の喜びから、育成の喜びへ。

 

私もこの場所を作って、もうすぐ1年が見えてきました。

はじめてこの家と出会った時の驚きや興奮、そして店を開けたときのうれしさが日常になって、何も感じなくなっていたのかもしれません。

 

また改めて、この場所にいられること、仕事ができること、ここに(こんな不便なところに)遠くからもたくさんの人がやってきてくださることに「すごい!」という感謝を感じながら、もっと素敵な場所をつくっていこう、と改めて思いました。

 

 

こういうことってすぐ忘れてしまうものだし、

大前研一さんが著書「時間とムダの科学」の中でおっしゃっていたという、

人間が変わる方法は3つしかない。

1番目は時間配分を変える。

2番目は住む場所を変える。

3番目はつきあう人を変える。

この3つの要素でしか人間は変わらない。

最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

というのを思い出して、スマートフォンを離れられるようにアプリを整理し、大掃除をし、セミナーに参加したり申し込んだり、出張を企画したり。

 

最後に、感想文を手書きでしたためて加藤造園さんに持って行きました。

後日メールで簡単なお返事をいただき、昨日は家の前を通って社長が手を振って下さるという「事件」がありました!

 

これからも、近所にある素晴らしい会社を通るたびに、また思い出しては行動にしていこうと思ったのでした。

 

あら、今日はずいぶん長くなってしまいました。